2006年06月07日

●コイノカオリ(角田光代ほか)

タイトルのとおり、恋にまつわる「香り」をモチーフにしたオムニバス短編集。
島本理生読みたさに図書館で借りてきた一冊でしたが、他の作家の作品も面白く、得した感じの一冊でした。
島本理生以外は初めて読んだんだけど、こうして知らない作家に触れることも出来るオムニバス形式っていいかも。

角田光代「水曜日の恋人」
そういえば角田光代の作品って読んだことなかったんだよね。
主人公は中学生の真帆。
真帆のママと、ママの恋人のちょっと冴えないイワナさん。
真帆の視点で語られる二人の恋愛、そしてイワナさん。
イワナさん自身にはあんまり魅力はないのに、悪くないと思えるのは何故かしら。
なんとも言えない雰囲気の良さが気に入りました。
ラストの大人になった真帆と恋人の描写も秀逸。

島本理生「最後の教室」
定時制高校に通う「僕」はクラスメイトの梨本さんに恋をする。
少しずつ梨本さんとの距離が近づいていく様子を、ちょっとドキドキしながら読み進めていたのに(笑)、終盤ものすごいすかしを食らうのです。いい意味で。
あっという間に話の印象まで変わってしまうのだから、すごいわー。
女は怖いなー、と思う話。
島本理生の小説に出てくる登場人物はどこかリアリティがないというか、思わず「ねーよwwww」と突っ込みたくなってしまうことが多々あるのだが、でも好きなんだよね。
しかしこの話の梨本さんみたいな女性、いそう。
冷たいラストもいいよ。

栗田有起「泣きっつらにハニー」
思わず作中のマッサージルームに行きたくなってしまった。
ハチミツの香りも嗅ぎたくなってしまう。
片思いの話もいいもんだ。

生田紗代「海のなかには夜」
綺麗なタイトルです。
作中の女子大生が揃いも揃って地味そうなのに違和感。
なんか会話も地味だしなあ。
登場人物の名前も昭和っぽいのが多いのも意図的なんでしょうか(爆)
好きなのに、いたたまれないって、少しリアル。

宮下奈都「日をつなぐ」
もっとも印象に残ったお話。
初恋の人と結婚したのに、子育てに忙殺されて次第にすれ違いが生じる日々。
これではいけないと、バイオリンを始めようと決意して楽器店に下見に行くんだけど、店員は主人公ではなく赤ん坊がバイオリンを習うもんだと勘違い。
いたたまれなくなって店を出た主人公のモノローグ。
「主役はもう私じゃない」
「私はすでに対象外なのだ」
…なんか結婚とか出産とかしたくなくなる話だよなあ(笑)
もう一つ転換のモチーフとして登場する豆のスープ。
豆は嫌いな私だが、なぜか美味しそうに思えてしまう。
主人公は福井で生まれ育ち、結婚後秋田へ移り住むのですが、なんかこう、日本海側でしか暮らしたことない女の湿潤さが良く出ていていいですね(偏見)
少し希望が持てるラストにほっとしつつも、「これからこの夫婦、どうなっちゃうの?」という不安も残される。
これは読者の判断にゆだねられているんでしょうけど、私は希望を取りたいです…。

井上荒野「犬と椎茸」
好きだった人と結婚できなかったことって、引きずるものなんでしょうか。
自分からは動かないくせにぐだぐだ言い訳ばかりの主人公に不快感が…。
しかし登場人物の誰にも魅力を感じないのに、ぐいぐい引きこまれてしまったのは、やはりストーリー展開の面白さでしょう。
作者の井上さんの他の作品も読んでみたいなあ。


なんか私の感想ではちっとも伝わりませんが、面白かったです。
軽〜く読めるし、恋愛小説が好きじゃない方でも楽しめるかと思う。
「香り」がモチーフになっているけど、それぞれの話に出てくる香りもしつこくない描写。
穏やかに楽しむことができる一冊でした。

posted by 瀬田 at 00:52| 福島 ☁| Comment(7) | TrackBack(0) | か行の作者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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